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2006年7月13日 (木)

お父さんのおかず

 昔一品多い、今一品少ない。

昔、自分が未だ子供の頃、家族が夕食を始める前に、父の晩酌が始まった。そこには肴があった。詳細は覚えていないが、クジラの刺身だったり、イカの刺身だったりした。特に食べたかったわけではないが、側にいると、一切れぐらい分けて貰って食べた。クジラは、未だ少し芯は氷っていて、とても冷たかった。時に歯にしみる時も有った。長じて自分のおかずに加えられるように成ったときは好物の1つになっていた。冷たいクジラの刺身を醤油にたっぷり浸けて、温かいご飯。

イカは、柔らかい身を食べさせて貰った。美味しい物だったが、たまに水溶きの練り山葵がきついこともあった。美味しいと言ってもそれ以上食べたいとせがんだ記憶はない。又、大人になったら、食べられるんだ、と思った記憶もない。父の皿の上にはエンペラも、足も有った。

小学校の高学年か中学に入りたての頃、従姉妹が家に遊びに来て、たまたま食べ物の話しに成ったときに、マグロの刺身が好きだ、と言ったときにはちょっと驚いた。ああいう物は、子供が好きだとか嫌いだとか言う物ではなく、大人になってから食べるものだと思い込んでいたからかも知れない。味を連想した記憶は全くないから、その時までに、マグロを食べた事は無かったかも知れない。

当時マグロと言えば、殆ど赤身だったと思う。今は大部トロが人気で出回って居る様だ。自分はマグロの赤身は好きだけれども、中トロ、大トロを好んで食べることはない。テレビで「脂がのって・・・このとろけるような・・・」と言って味を誉めているが、そんなものかしら、と思ってしまう。居酒屋で刺身の盛り合わせの中にトロが有れば、自分の分として食べるだけで、特にどうと言うこともない。

最近のお父さんは、10代の子供より一品おかずが少ない。お父さんは太り気味で、高脂血症。コレステロールのコントロールが必要で、焼き肉とかハンバーグなどのおかずは、お父さんの皿が無い。高タンパク低脂肪の健康食品ばかりだ。蔬菜を食べては、心の中で、自分はウサギやヒツジではないと思い、ニンジンやその他の根菜、芋類を食べては、自分は馬や牛ではない、もうちょっと歯ごたえのある物が食べたいと自嘲する。みんなお父さんの健康第一。「お父さん、からだに気をつけて・・・」「お父さん、無理をしないで・・・」野菜や豆や根菜ばっかり。

昼は、これまた健康弁当を食べて、自分の事を思ってくれて居れば、文句も言えないし。彩りなんかは、余り興味が無くて、もっと食べられるものにして欲しいと思いつつも、「良いわね、愛妻弁当で」と冷やかされながら、食べている。自分としては、飾り物の様な弁当よりも、食べられる弁当が欲しいと思っている。愛妻弁当とはこちら側から見た言葉でだから文句など言わない、と言う意味だ。

それでたまに反動で、悪いなあと思いつつも、同僚と軽く飲むときは、罪悪感に駆られながらも、脂っこい物を食べている、帰宅して問いに答えれば、「サラダとか、酢の物とか・・・」と答えてこれも忸怩たる物が有る。

恨みはないが、自分たちの世代は、子供の時はおかずが一品少なくて、お父さんに成ったら、おかずが一品少ない。

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