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2006年8月 5日 (土)

田舎の川

   

小学校の5年まで、夏は家の下を流れる川で泳いだ。

泳ぐ場所は昔から同じで家から歩いて5~6分の所にあった。場所は男女別になっていた。女子の場所は男子より200メートルぐらい下流にあった。泳ぐ場所は男女とも、下流側に小石の浅瀬と川原があり、上流側にはアマと呼ばれる、粘土を堅くしたような少し粘りがあって脆い岩のような物が底にある淀みの有るところであった。浅瀬は子供の膝ぐらいの深さで、淀みは、深いと言われていたが、3メートルも無かったように記憶している。ある時、大きな息をして、力一杯潜ってゆくと底に着いた。背が立たないと言うだけで、実際はそんなに深い所では無かった。

水浴するところの土手は川面まで少し高さがあり、脱いだ服を置いておけるちょっとした広さのある所だった。そこには人家の有る方から土が露出した5~60センチの小径を辿っていった。その草地の真ん中は子供達が頻繁に踏みつけるので、5~6畳の広さで土の広場に成っていた。周りはチカラシバやオオバコ、ツメクサが生えた草地である。

記憶が曖昧だが、女子達が泳ぐ方には土手に柳が数本有って日陰を作っており、男子の方には欅やらその他の木が生えており、やはり日陰が有った。その上は小さな杜になっており、鬱蒼として夕方以降は大人も通らないと言われていた。

何かの決まりが有ったのだろうけれども、多分10時前や午後3時以降に泳いだ記憶は余りない。近所の子と一緒に行ったり一人で行ったりしたが、行くと大抵、何人かが居た。多いときは20人以上居た。集落で時間や曜日を決めて余り混雑しないように緩い決まりが有ったようにも思う。

服を脱ぐときには日陰で服もそこの草地に置いた。暫くして、からだが冷えて、土手に上って、休むときは日向に居た。夢中で遊んでいて、唇が紫色になる子も居た。そんな時は誰かが、上がって少し休んだ方が良いと言うことが多かった。また互いに、未だ唇が紫でないことを確かめることもあった。

上の土手に上がった時は、草の上に座っていたと思う。大人が海水浴場でよくするようにゴロゴロして、長い間寝ていることは無かった。2、3人居るときは、オオバコの穂で引っ張り合いをしたり、シロツメクサの花を編んだりして遊んだ。チカラシバの穂で籠を編める子も居た。アブが飛んできて、時々咬まれた。お互い気が付けば、手で叩いたり、服を振り回して追っ払ったりした。咬まれると血が出たし、ビックッとするほど痛かった。シオカラトンボも頭や肩に止まった。川の法面にはムカシトンボが沢山飛んでいた。

小石が有るせせらぎでは、魚が泳いでいた。砂利の川原に仕掛けを掘って水が流れるようにしておくと、オイカワが何十匹も入り、みんなで夢中に成って掴もうとしたが、大部分には逃げられた。水面からピョンピョン跳ねて本流に戻った。中には陸側に跳ねてばたつくものもあった。

水めがねを持っている子は、それをはめて泳いでいたが、持っていない子も多かった。水めがねには、二眼タイプと、楕円の一眼タイプが有った。シュノーケルも有ったが、性能が悪くまた使い方も不慣れで水を飲んでおぼれ掛かる子が続出して、直ぐ廃ってしまった。

男子の場所から上流300メートルぐらいの所には、離れた集落の子供達が集まる所が有ったが、泳いだり川底を歩いたりして行ったことが2~3度有るばかりで、そんなに頻繁に行くことはなかった。そちらは男女が一緒だった気がする。浮き輪やタイヤのチューブに空気を入れて、それに乗って流されて、下流に来る子も時にはあったが、余り交流は無かった。小さい子供達は小さな閉鎖された、友達や空間で遊んで居たのだろう。

タオルやバスタオルを自分は持って行かなかったが、他の子達も持って行かなかった様に記憶している。上がって帰るときは、髪を掻きむしるようにして水を飛ばし、体を自然に乾かしてから、シャツを着てそれで下半身を隠して、『海水パンツ』を取り替えた気がする。

家に帰って、甕に汲み置いた水を柄杓でゴクゴク飲んでいると、いれば祖母や母が来て、腕に触ったり額に触ったりして、「冷たくて、涼しいねえ」などと言われた。有ればスイカやトウモロコシ、若しくはトマトやキュウリを食べてから、また遊びに出掛けた。それらには塩を付けて食べた。

そんな記憶も今では自分の事の様でないほど遠くなった。狭いながらクッキリとした小径も、蔓草や藪に覆われしまった。小石の浅瀬や川原も土に埋もれた。子供達の歓声が響いた田舎の川も、今や昔日の面影は無い。

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