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2006年9月19日 (火)

越後屋(1)

友達が駅から電話をしてきた。ちょっと寄りたいという。勿論OKである。暫くして、玄関のインターホーンが鳴った。「ヤマ」と言ったら「カワ」と応えた。そこで山鹿流の陣太鼓が、鳴りはしなかったけれど、念のためのぞき窓から見ると、暗くてよく見えないが、目を凝らしてみると、でっかい目が見えた。向こうものぞき窓に目を付けて見ているらしい。変な奴だ。招じ入れると、土産を渡したいという。上がってもらい一緒にお茶を飲んだ。お土産はズッシリと重い。風呂敷に包まれている。開けると菓子折が出て来た。包み紙を取って蓋を開けると、饅頭である。ここで友達の目がニッと笑った。怪しいと思い饅頭を退けてみると、中には小判が入っていた。良く見たら最中だったけれど。

「越後屋、お主も悪よのう」

「お代官様ほどでは有りませぬ」

「ハッハッハ」


  話し声がドア越しに聞こえてきて外がざわついた。我々は目を見合わせて、少し身構えたけれども、三つ葉葵の紋の付いた着物を着た侍も、般若の面を被った侍も、商人風の爺さんが手代番頭風の小父さん達を引き連れて現れることもなかった。察するに隣人が犬に話しかけながら、散歩から帰った風だった。

「手前も賢くなりました、犬の言葉がよく分かります」

「越後屋、あれは、犬が人に話しかけたのではなく、人が犬に話しかけたのじゃ」

「さようですか、友達のような、家族のような話し方でしたが」

「それが今様じゃ」

友達は自分が持ってきたお土産の饅頭と最中を一個ずつ食べて、何事も無かったかのように帰った。駅に向かう坂道を歩く姿は心なしか少しぎこちない気がした。大丈夫か知らん、お互い様だけれど。

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