« エビの尻尾 | トップページ | 急に立ち止まる人 »

2006年11月14日 (火)

お婆さんの失意

小学生の男の子達が数人で午後に街を歩いていた。放課後、下校途中である。大きな声で歌を歌って、それに歩調を合わせて歩いている。元気なものだ。近くの公園の中に入った。辺りを練り歩いている。クネクネと歩いて、行きつ戻りつしている。小春日和の青空の下。公園の中を練り歩いて、顔に少し汗が滲んでいる。公園の隅にあるマテバシイの下に行った。歌を止めた。地面には大きな椎の実がバラバラと落ちている。そこにしゃがんで拾い始めた。拾ってはポケットに入れている。暫く拾ってから、近くのベンチに並んで座った。

「夏に金魚すくいで取った金魚を飼っていて、大きくなったんだ」小太りの子が言った。

「家では亀を飼っている」中ぐらいの子が言った。

「家では猫を飼っている」2番目に大きな子が少し自慢げに言った。

「家には、猫と犬が居るんだよ」大きな子が勝ち誇ったように言った。みんながさっきから黙っている小さい子に視線を向けた。その子は少し困った顔をしていたが、みんなが催促するように、ジッと見ていると、顔がパッと明るくなって言った。

「家にはお婆ちゃんが居るんだよ」

それを聞いた子供達は「へー」

小さい子は元気に宣言した。「時々、お小遣いもくれるんだよ」

ここまではいつか聞いたような話。

子供達が座ったベンチを挟んで茂みが有り反対側にもベンチがあった。二人のお婆さんが座って日光浴をしながら、ポツリポツリと話しをしていた。昔話の様だ。二人とも小柄で色白でニコニコしていた。一人の顔が急に曇った。小さい子はそのお婆さんの孫だった。

その日からそのお婆さんは、塞ぎ込むようになった。心の中で『自分は何だったんだろうか』と自問した。年が明けて間もなく死んでしまった。

小さな子がみんなに報告した。

「お婆ちゃん死んじゃったんだよ」

|

« エビの尻尾 | トップページ | 急に立ち止まる人 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/119338/4187656

この記事へのトラックバック一覧です: お婆さんの失意:

« エビの尻尾 | トップページ | 急に立ち止まる人 »