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2007年2月21日 (水)

ハタハタの季節

去年暮れに田舎からハタハタが送られてきた。50匹位入っていた。その日は、ハタハタのミソカヤキ(ハタハタが主材のみそ味の鍋物)を食べた。汁全体がちょっとヌルッとしてことのほか味が良かった。一人宛56匹食べた。次々に田舎の事が思い出されて、色々ものを思った。みんながみんな幸せに生きているわけでは無いけれど、それはそれでいかんともしがたいことも有るし。長寿に恵まれることもあるし、自分が死ぬことも予想だにしなかったのに、亡くなってしまう事も有るし。いつも明るく元気に振る舞っていても、その内心を察すれば、自分ではとても堪えきれない様な境遇の人もいるし。自分がもう少し傍に居てやれたら、もしかしたら、悔やむことは多いけれど。時はドンドン過ぎ去ってゆく。

昔は今より少し寒かった気がする。雪は今より多く降っていた。12月に入ると、冷たい北風に乗って霰が舞い散る日が多くなり、その内粉雪が降り辺り一面うっすらと雪に覆われる。そんな日に雷が鳴って一層寒くなるとハタハタの季節は巡ってくる。日本海の深海を北上してきたハタハタが産卵のために秋田沿岸に押し寄せる。海が盛り上がるようだという。漁師は舟が沈むほどに水揚げをして、港に揚げる。休む暇もなく漁師は獲る。その新鮮なハタハタはトロ箱に入れられて、トラックで運ばれてくる。港から遠い我が村にもそのトラックは毎日のようにハタハタを売りに来る。村の人達はその拡声器の声が聞こえればいつもトラックが留まる場所に集まってくる。初物の内は大きなボールに一杯買って食べる。

夕食には塩焼きのハタハタを子供でも56匹は普通に食べる。ご飯も進む。焼くのが間に合わないくらいドンドン食べる。七輪にハタハタの脂がしたたり落ちて、濛々と煙が出る。時々ボオッと焼き網に火が回る。団扇であおいで消す。何処の家でもハタハタを食べている。たくさん食べている。そんな日が何回か過ぎる内に価格も安くなり今度はトロ箱何個という形で買う。飯鮨を作る、一夜干しを作る、塩漬けを作る。季節の物を季節に食べる。たくさん獲れる物を加工して長い間食べる。最初に飯鮨を食べるのは大晦日だ。ご馳走だ。その年も暮れる。

子供達は自分の家が買わないときもその売り場に集まって有様を見る。空は灰色の雲が低く垂れ込めている。北風に飛ばされて粉雪が舞い散る。男達は手ぬぐいで頬かぶりをしている。女達は姉さん被りをしている。着ている物は皆粗末だ。子供達は学生帽を被り学生服を着ている。袖口はテカテカしている。中には洟を垂らした子供もいる。足下はみんな長靴だ。何処かの家のトタンが風に煽られてバタバタする。ハタハタ売りが大声で口上を言う。村の人達は買ったハタハタを一輪車に積んでゾロゾロ帰る。

こんなセピアの景色ももう映画の1シーンの様になった。

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