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2007年5月16日 (水)

同期の結末

マレーシアのマングローブの中にある一本の木で、無数のホタルが最初はバラバラに明滅している。それが段々揃って行って、最後には完全に同期して明滅する様子を見たことが有る。誠に不思議な現象だ。どんな理由か、どんなメカニズムが働いているのかは、科学者が解説している通りだろう。このほかにも、色々な事が同期する瞬間って有ると思う。余り小さくて気付かれないことも有るだろうし、余り大きくて気付かれないことも有ると思う。

数人で歩いていると、身長の差が有るのに、歩幅と速さが同期して分列行進のようになる事が有る。無謀な戦争に突入するのは、数多くの人が、頭に血が上って同期して、しちゃならない決定をして始めてしまうのだろう。

同期するとか共鳴、共振するとかは、科学的に研究されているけれど、宇宙の根本的な何かが絡んでいるような香がする。

2007年4月13日金曜日、日中は良く晴れてその季節としては暑いぐらいであった。日が陰ってからは気温も徐々に下がり、夜の錦糸町駅4番線ホームは風が通り抜け寒いぐらいであった。数分に一本ずつ15両編成の長い電車は入線して、各ドアに10位並んでいる人達を乗せては出発して行った。同僚や知り合いと乗り込むと言うこともなく、乗客は静かに黙って並んでは黙って乗り込んでゆく。車内はパラパラと立っている人がいる程度でもうそんなに混んではいなかった。窓際の席で、ピーナッツを食べながらビールを飲んでいる客も有る。

21時45分発君津行きの電車がホームを出た。次の電車は21時55分発の佐倉行きで10分間の待ち時間が有る。少しずつホームに人が上がってきた。他の電車より待ち時間が長い分だけ待つ人の列は少し長い。新聞や本を読んでいる人、イヤホンでラジオや音楽を聴いている人、携帯電話でメールをしている人。先頭から3両目の1番前よりのドアの前にも他と同じように人は並んでいたが、何かしている人は一人も居なかった。全員所在なげにボンヤリ前を見て電車を待っていた。暫くして並んでいる人全部がゆっくり同期して揺れていた。

佐倉行きの電車が入線してきた。電車が停止してその集団が乗り込もうとしたときに、隣の列の1番後ろに並んでいた中年の男性がちょっと列を乱してさり気なく1番前に来て、乗り込んでしまった。ゆっくり同期して揺れていた集団に緊張が走り、ピクリと動いた。割り込んだ男性は何気ないふうで歩いて、偶々1人が降りて空いた席に座った。少し笑みが顔に現れたが、直ぐ目を瞑った。揺れた集団はその男性に近づいて、最初の1人が肩をグイと押した。中年の男性は目を剥いてその人を睨んだ。その瞬間、揺れた集団は無言で表情は先ほどと変わらず特段の表情はなかったが、勝手に手足が動いているふうで、又1つの生き物の様に動いて、その中年男性の上着を掴んで席から引っ張り出した。その生き物は男性を飲み込むように囲んで、殴ったり蹴ったり踏みつけたりした。男性は恐怖に駆られて目を大きく見開いていたが、口を開けたまま、全く声を発する事も出来なかった。男性は段々ドア側に連れて行かれた。その間にあちらこちら殴られたり蹴られたりした。鼻血がダラダラと出た。目の周りは真っ黒に腫れ、瞼は切れ血が流れ落ちた。髪の毛は数百本抜かれた。脛や膝も散々蹴られて立っているのもやっとだった。電車のドアが閉まる直前に男性はホームに転がされた。その生き物はサーッと離ればなれになり、それぞれの乗客として電車に留まった。その間約10秒。電車が出発した後、その男性はこれは悪夢だと思いながら、蠢いて横たわっていた。

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