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2007年5月 6日 (日)

犬便所

先の統一地方選挙でユニークな政策を掲げる町長候補者が当選した町が有った。

その町は地方都市のベッドタウンとして急速に発展した。町には~~シティと言うショッピングモールが出来た。人口の8割はこの10年間で移り住んだ人々で占められている。大部分の人々は都市の集合住宅から、戸建ての家に移り住んだ。核家族と3世代家族の割合はほぼ拮抗している。

開発された住宅地は緩やかな南斜面に面していて、放射状に住宅が広がっている。町内に点在した集落にも小規模開発地が段々増えてその町は、今ほぼ飽和状態となっている。旧来からの住民は農業や林業を営んでいる者が多い。それにどんな町にも有る工務店や商店が有るばかり。今は高齢化が進み、全体的には発言力が低下して、静かに暮らしている人々が多い。新住民の方が圧倒的に多く旧住民との軋轢は発生し得なくなった。

新住民は、犬猫などのペットを飼って居る人が多い。朝晩は広い歩道や点在する小公園でペットを介して立ち話をする人達がここそこに見える。犬の糞を片付ける人も多いが、初期に移り住んだ人達は、形式だけの人も多い。当時は農村の中に移住者の家屋が点在していたので、そのままにしていた事が多かった。

新住民同士で、ペットの飼い方について水面下で長い論争が有った。それで折衷案とも言うべき解決策が出て来た。小公園にペットの糞を捨てる専用のゴミ箱を設置して町が処理すると言うもの。名前は公募で決まり『ドッギー』。この施策は新住民の中から出て来た1人の町議会議員の主導で実行され長い間行われていたが、段々意識は低下して行儀が悪くなり、ドッギーの有る小公園のみならず町は犬の糞だらけになってしまった。近隣の町からは犬糞町と陰口を叩かれるようになった。犬糞専用のゴミ箱は糞ばかりでは無く、犬猫の毛、生ゴミ、生まれたての子猫、小犬、各種ペットの死骸などで溢れた。お母さんのお子供に対する脅し文句は、「ドッギーに連れて行くわよ」。どんな駄々をこねる子供もこの一言で顔が引きつって泣きやんだ。姑との抗争のあるお宅では、嫁の気休めは、姑をドッギーに捨てる幻想。

そうこうしている内に先の地方選挙、ドッギーを推進していた町議が町長選挙に立候補した。政策は小公園を中心に町内に20個の犬用の公衆便所を作ること。便所には自動水洗装置装備。毎日朝夕2回巡回して、指定道路の犬糞を町で片付けること。そして犬糞町の汚名を雪ぐ事。

選挙戦は熾烈を極めた。反対派も汚名を雪ぐことには賛成したが、犬便所、清掃など町政の問題ではなく、住民の意識の問題であり、予算を使うべき政策は福祉や教育など山積していると、訴えた。ドッギー派と反ドッギーに、町の輿論は二分された。ドッギー派は、「現実的な」政策に協力を求めた。反ドッギー派は「良識的な」政策に協力を求めた。

選挙結果、僅差でドッギー派の勝利。その町には間もなく犬の便所が建設される。

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