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2007年7月12日 (木)

盛っ切り

昔商店街に有る事務所で働いていた事がある。斜向かいに酒屋が有った。最近の様に酒屋がドンドン廃業してゆく時代じゃなかった。午後から店は段々忙しくなって、店にお客は頻繁に訪れる。配達も多かった。夕方になると、詰まり事務所で仕事が終わり、帰る頃に成ると、酒屋には何人もカウンターで飲む人が有った。盛っ切りである。外から目立たないコの字型のカウンターがあった。焼き海苔、蒲鉾、サキイカ、ピーナッツなどを食べながら、男達が立ち飲み。殆どは常連で静かに飲んでいる風だった。まあ多分12杯飲んで帰るのだろう。自分は入った事は無かったが、今考えると、何かあった日に一杯引っかけてから帰ると気が休まったかも知れない。

今はスタンドバーとか言って、小綺麗で小さな飲み屋が有るようだ。現代の1つの出会いの場だったりするのだろう。若い女性が居ることも多いらしい。自分は入る気はしない。

昔風の盛っ切り屋は今でも何処かに生き残って居るのだろうか。自分は1人で酒を飲むことは滅多にないが、有ったら、ちょっと立ち寄ってみたい。何かちょっと多分、少しだけ心境の変化を体験できそうな気がする。見ているだけじゃ分からないことも結構あるから。1人で飲むとちょっと物思いに耽りそう。

高校生の頃、列車通学をしていた。冬になると時により列車が遅れた。峠で吹雪きって事。今と違って小出しで30分位遅れるみたいなことを34回放送される。今だったら駅員に詰め寄る、みたいな事だろうけれど、当時は今より余程暢気だった。それが乗換駅で起きると、駅から遠くにも離れられないし、ボンヤリして過ごす事が多かった。下校の時だと、間が悪いと腹は減るし、寒いしで、今考えると、深刻そうだけれど、当時は特に考えもしなかった。お金があるとき駅に隣接したうどん屋に何回か入った事が有る。はっきりは覚えていないがうどんは560円だった気がする。そこに居る大人達は盛っ切りを飲んでいた。自分も2回飲んだことが有る。防寒着を着ていたかも知れないけれど、どう見たって高校生、鞄ぐらい持っていただろう。今だったら通報されたことだろうけれど、当時は特に何も起きなかった。

うどんを食べてお腹一杯になって、盛っ切りを飲んで酔って、頭はちょっと痛かったけれど、心は軽く待合室に戻り、運良く座れれば、うつらうつらして列車を待った。列車から降りると、外はチラチラ雪が降り、空は暗く、空気は冷たい。風が吹いている。家に着く頃には勿論醒めていた。北国の田舎の青春もそれなりに悩み多けれど、今考えると暢気で楽しかった。心は当時のまんまのつもり、年は行ってしまった。

そう言えばあれ以来盛っ切りを飲んでいない。散歩の時にでも見つけたら、入って一杯飲んでこよう。

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