« 英会話の | トップページ | 駆け込み乗車 »

2007年7月22日 (日)

丸い青空

子供の時に、学校から帰ると裏山に遊びに行った。1人で行くことが多かった。自分には秘密の場所が有った。背丈の倍ぐらいの笹の広い野原が雑木林の中に有った。誰も傍には居ないし、居るはずも無いのだが、慎重に人気が無いことを確認した。小路を辿って最後は藪を踏み分けてその入り口に辿り着いた。笹原の根元に小さな空隙があった。その中に潜り込むと2メートル程で笹の生えていない幅30センチほどの小路が有った。その小路を時々曲がりながら辿ると直径3メートル位の笹が全く生えていない草原が有った。その周りの笹は背丈が少し低かった。

その秘密の場所には嬉しいときも嫌なことが有ったときも行った。寝ころんで上を見ると丸い青空。季節によって、虫の音だったり、小鳥の鳴き声だったり、蝉の声だったり、風の音だったり、様々な音がした。自分はそこに寝ころんで、丸い空を見ながら様々な事を空想した。少年の時のたわいのない空想ばかりだった、多分他の少年の空想と余り変わらなかったと思う。

自分が横たわる円形の草原、取り囲む笹、丸く青い自分だけの空。寝ころんで空を見ていると、月がその丸い空を通って行くことが有る。その月はどう考えても自分1人の月。月は益々少年を1人の世界に押し遣る。鳥が通ることも有る。鳥だったらあの子の元に飛んで行ける。夏から秋にかけては、良くトンボが通った。群のトンボがズンズン通るのは、傷んだ少年の心に勇気を与えた。秋遅くなると、ススキの白い穂がフワフワと数限りなくゆっくり流れて行くことがある。無心にあくことなく眺めた。

その内いつしか訪れることも無くなり、自分は高校を卒業して家を離れた。田舎はあれ以来殆ど止まってしまったから、あの秘密の場所は未だそのまま有るかも知れない。ただ、今はそこまでの雑木林の中が藪になって通れないだろうと思う。もしかしたら、あの通い慣れた自分だけの秘密の場所も今は分からないかも知れない。

大人になると色々な物を失う。失った物はもう心の中に浮かばないから失ったことさえも気付かない。寂しい大人に成ってしまった。

|

« 英会話の | トップページ | 駆け込み乗車 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/119338/7235028

この記事へのトラックバック一覧です: 丸い青空:

« 英会話の | トップページ | 駆け込み乗車 »