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2007年10月17日 (水)

蚊帳の中

小学生の頃、ホタルの季節になると良くホタルを取りに行った。捕ったホタルは虫かごに入れた。その中にアスパラガスが育って大きくなったものを摘んで入れた。細い線のような葉っぱばかりなので、いるところも分かるし、光っているのも簡単に観察できた。黄色の懐かしさを覚える光。光ったときの明るさ、消えたときの暗さ。入れては暫く眺めた。大抵は翌朝に家の庭に逃がした。朝は光っていない。不活発で地味な虫だ。

夜になると又近所の友達と取りに行った。ホタルの季節は夜に外を出歩いても黙認だったから、喜んで出掛けた。今に比べて、町は暗かった。各自懐中電灯を持って出掛けた。

母に危ないところに近づかないように注意されたが、もとよりそんな所には近づかなかった。ホタルは田圃の畦や小川の縁など何処にもいた。時に何十も小川の上を飛んでいることも有った。お気に入りの木が有るらしく、その木には沢山付いて明滅していた。

子供達の間ではヘビは夜目が光って二つ並んで光っているのはヘビの可能性が有るから手を出してはならない、とか、ある種の毛虫も光るから気をつけなければならないと言われていた。友達の中ではヘビに咬まれたり毛虫に刺されたりした子は居なかった。

いつも日中彷徨いている所だったから、特に危ないことは無かったが、滑って田圃に足を突っ込んだり用水に足を突っ込んだりしてしまう子は居た。それでその夜はその子に取って台無しである。濡れただけならどうって事もないけれど、泥だらけになったら、近くの小川に行って洗う。洗った後には誰かと一緒に帰った。

田舎は関東よりホタルの発生が遅かった。ホタルが出る頃にはもう蚊が家の中に入ることが多く、早い家では蚊帳を吊っていた。帰ってきて寝るときに蚊帳の中にホタルを23匹放すことが有った。ゆっくり波打って光りながら飛んだ。何処かに止まって光ることも有った。子供の事だから布団に入ると、少し眺めただけで直ぐ寝入った。

高校生位になると、ホタルの数は激減した。農薬や河川の汚濁が原因である。誰も気にも留めていなかった。20年ぐらいして又少しホタルは戻ってきた。景色も少し落ち着いた。その間に人々の生活様式は変わった。人口が減った。田舎は寂しくなった。自分達が子供の頃は、町に子供が溢れていたのに。里山に縦横に付いていた土むき出しの小路も全て草に蔽われてしまった。もう昔には戻れない。

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