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2008年4月15日 (火)

夕闇の白い杖

昨日は遠距離散歩をした。夕方から曇った。予定通りだったが辺りは薄暗くなっていた。調子よく歩いた。速度は余り落ちていなかった。そこからの帰路は浅間山公園から多磨霊園を突っ切るのが、1番の近道だ。迷わず雑木林の小路に踏み込んだ。霊園の外周にある小さな杜だ。一旦寂しいバス通りに出る。

1人の若い女性がチラチラと視界に入った。白っぽい服を着ている。このまま歩けば、数十メートルで交叉しそうで躊躇した。辺りは薄暗い狭隘路だ。ゆっくり歩いて時間を稼いだが、何となくしっくりいかない。脇にある無人の児童公園のベンチが目に入り、入って座った。そこで十分やり過ごしてから、通れば良い。ベンチに坐った。花の香りがした。タバコに火を付けた。タバコが違和感を減らしてくれる。ゆっくり吸った。もうタバコの火が赤く見えているに違いない。ペットボトルの水を飲んだ。時間が止まったようにゆっくり流れる。吐いたタバコの煙が無風の大気に拡散する。

彼女はゆっくり歩いている。先ほどより近づいた。先ほどよりハッキリ見えてきた。ぎこちない足取りである。白い杖を突いていた。片側は斜面で、幅は狭い。道路側にはガードレール。向こう側に曲がることを期待したが、こちら側に曲がった。もしかしたらバス停に向かっているのかも知れない。ここのバスは2系統が止まる。本数は少ない。少し焦燥感が胸に沸く。

二本続けてタバコを吸うことは無いのだけれど、思わずタバコの箱を取り出してしまった。ちょっと思いとどまって。又水を飲んだ。

杖の女性が来た方向から又1人の女性が早足で歩いてきた。杖の女性より年配の様に見えた。その女性は見る間に近づいて来た。追い越すのかと思っていたら、杖の女性の直ぐ近くに来てからゆっくり歩いて話し掛けた。切れ切れにしか聞こえないが、内容は分かった。

杖の女性に行き先を尋ねて、バス停を教えて、腕を貸して、にこやかな顔で話ながらバス停で立ち止まった。女性は知っている風だったが、時刻表をチラッと見た。間もなく目的のバスが来た。彼女は杖の女性に話し掛けながら、手を貸してバスに乗り込んだ。二人は同じ席に並んで座った。自分の前を通るときに杖の女性の顔が見えた。安心感と感謝の気持ちが溢れていた。話し掛けた女性は親しい人と話すような、いつもの感じのように見受けられた。

バスをやり過ごして、ベンチから立ち上がった。自分は安心して多磨霊園の中に入って、帰宅を少し急いだ。

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