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2008年11月 4日 (火)

ウシロベゴ

自分の田舎には皆さんの地方に居ない物が居る。その名はウシロベゴ(このゴは鼻濁音で発音しないで文頭にあるゴと同じ発音)、別名スナベコ(こちらはコでもゴでも良い、濁音での発音は同じ)。皆さんの所に居るのは、似て非なるアリジゴク、則ちウスバカゲロウの幼虫ですね。

雨の当たらない崖下や、大木の根元、土蔵の軒下、社寺の縁の下などに居る。自分と趣味が合いそうだ。乾いたサラサラの土地ですり鉢状の穴を掘ってその下に生息している。

蟻やダンゴムシが落ちかけると砂を飛ばして足下を掬い落ちてきたところを、齧って体液を吸って殻になったら、穴の外に放り出す。人間の追いはぎとちょっと似ている。穴の回りには、カラカラの残骸が幾つも転がっている。

何でウシロベゴと言うのか、こいつは後ろ向きにしか歩けない。自分も後ろ向きだけれど、歩くのは前向き、こいつは前向きだけれど歩くのは後ろ向き。何十匹も実験したけれど、前に歩いたのは一匹も居なかった。ベコ(ベゴ)というのは牛の事です。この虫には立派な角が生えて、体がズングリしているからベコと言う、多分。

中学生の時に、友達にこう言った。「この前、~~山へ遊びに行ったら、山頂近くに社がいくつか並んでいた。その軒下にこんな(両手で直径20センチぐらいの輪を作って)大きなアリジゴクがいっぱい有った。きっとこれぐらいの(親指と人差し指で卵ぐらいの輪を作って)ウシロベゴが居るに違いない。小枝でかまったら、砂をバンバン飛ばされ、大きな角がチラチラ見えた。捕まえてきても飼えないので、取っては来なかった」

友達の目がランランと輝いた。社への路を教えた。彼が巨大なウシロベゴを念願通り入手出来たかどうかは不明、多分駄目だったろうけれど。

このウシロベゴは不思議な生態である。23年の幼虫期間には糞をしない。変態して成虫に成ってから、一度に放出するらしい。23日の便秘の後の便通でも相当スッキリするのだから、それはもうこの世の天国、かどうかは知らないけれど、その苦しみからの解放を味わってみたい気がする。この虫、この後がまた変わっている。清く美しく水だけ飲んで23週間で死んでしまう。

極悪非道の人生を歩んできた人が、死ぬ直前に翻然と悟って文字通り体から汚れたものを全て出し切って、最後は清らかに生きた、みたいなそんな虫が我が故郷には居ます。

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