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2009年8月12日 (水)

渡り鳥の小枝

シベリアからの渡り鳥は小枝をくわえて日本海を渡って来る。疲れればその小枝を海に浮かべて、しばしの休みを取る。日本の大地に着くとその小枝をそこに置いて、陸の上を飛んで父祖と同じ所を目指して更に飛んで行く。半年後、シベリアに帰るとき、海岸まで来て、それぞれの小枝をくわえて旅立つ。戻ることが出来なかった鳥の数だけ小枝がその地に残る。小枝が多ければ多いほど帰られなかった鳥が多いという事。海の上を漂う小枝は海や大空で力尽きた鳥のもの。

この話の源流と思われるものが紀元前2世紀頃に成立した淮南子と言う中国の書物に葦を啣む雁(あしをふくむかり)として載っている。当時は準備が整い手抜かりが無いことの例えだったとのこと。それが日本に伝わり、それぞれの地方で地方色の有る話に変化して行ったらしい。

太郎は小学5年生。少年サッカークラブに入っている。活発な子供だ。小さなグループのリーダーであり気が強い。ゲームも大好きである。お勉強も出来る方だ。サッカーの練習も積極的に参加している。ゲームも一心不乱に遣っていることが有る。

その彼が海浜学校で日本海に望む田舎に数日滞在した。プログラムの中に地元の引退した先生の講義が有った。早朝貝殻や流木が散らばっている海岸を散歩して、木陰で休みながらお話しが有った。その老人はその地に伝わる渡り鳥の小枝の話をした。

そうすると太郎の顔からリラックスした笑みが突然に消えて、その目から大粒の涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。太郎は不意にその場から走って波打ち際まで行き、小枝を何本か拾って、胸まで持ち上げ、強く握りしめながら北西の海を眺めて、暫くそこを動かなかった。

自分にもそんな少年らしい多感な時代が有ったのだろうけれど、もう遠い昔に忘れ去ってしまい、感動することもなくダラダラ生きている気がする。

9月になったら日本海に行って、海水浴の人達がたくさん居た、その残像を感じる砂浜を歩いてみよう。

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