« 電車でビール | トップページ | 渡り鳥の小枝 »

2009年8月 6日 (木)

魔法の扉

その家の扉には魔法が掛けられている。

彼女は、子供の時には妹や弟の面倒を見ていた。両親は田圃や畑に行って、日中はいつも留守。繁忙期には夜も帰らないことが度々。いつも彼女は簡単な食事の支度をして、弟妹に食べさせた。一番下の妹には襁褓の面倒も見た。気付いたときにはそんな事をしていた。他人の家の事は知らない。アジアの田舎の片隅。

田圃が忙しいときは両親が帰る前に、暗くなった。未だ当時は電気が無かった。夕闇迫る中で、食事の支度をし、弟妹と一緒に食べ終わる頃には、もう真っ暗になっていた。

黙って弟妹達を寝かせた。彼女は蝋燭の光で食器を洗った。その後に盥で洗濯をしながら、度々居眠りをした。ハタと目が覚めて又洗濯。外に乾す頃には、満月もかなり高くなっていた。そう言う生活が辛いと思ったことは無い。毎日のようにおかずはカエルと川の小魚、小エビ。農家だから米と野菜はいつも有った。煮炊きは炭火の七輪。毎日両親のいない生活。弟妹達は特に不満は無いように思えた。特段の考えは無かったけれど、大人になったら市場で何かの売り子に成りたいと思っていた。

長じて彼女は市場の売り子の場所を見つけて野菜を売るようになった。毎日楽しく働いた。朝早くから夕方日が沈むまで。その内、市場で働く様になった若い男と知り合って、結婚した。2人とも田舎の在り来りの女と男。買い物客も特に2人に特徴を見いだすことは無かった。

仕事が終わって、それぞれ家に帰って、その扉を通りすぎると、その女は美女に成り、その男は美男に成り、心がウキウキして2人で夕食の支度をして、一緒に食べた。片付けをして寝室のその扉を通りすぎると、その女は益々綺麗になり、その男は益々いい男になった。2人は子供にも孫にも恵まれた。

あなたの家にも魔法の掛かった扉が玄関と寝室に付いているのに、あなたの邪気、妄念がその力を封じていませんか。

|

« 電車でビール | トップページ | 渡り鳥の小枝 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/119338/30846109

この記事へのトラックバック一覧です: 魔法の扉:

« 電車でビール | トップページ | 渡り鳥の小枝 »