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2010年2月10日 (水)

毛糸の帽子の男

ついこの間、遭遇した出来事。

駅へのアーケードの中ごろに、床屋が有る。本当はヘアーサロンとかヘアーメイクとでも言うのかも知れない。椅子が10脚ほど有って、店内がとても明るくややゆったりと作られている。自分なんかは、恐くてとっても入る勇気はない。色々どうするか、ああするか聞かれても、答えようも無いし、どう言うイメージで、と言われても何にも浮かばない。それに料金体系が複雑そうだし、結果高そうだし。大体スタイリスト、トップスタイリスト、ディレクター、クリエイティブディレクターとかが有って、それで料金が何倍も違うのは、益々恐ろしい。それより何より、そんなに多様なニーズのある髪の毛の量じゃない。

自分にも行きつけの床屋が有る。一応聞かれるから最低限答えるけれど、本当は一言「二ヶ月前と同じにして」(勿論髪の毛を増やせとか、白髪を減らせとか、と言う意味ではなく、髪型、髪の長さ)か「いつも通り」。

そのヘアーサロンの前に時々チラシを配っている人が居る。誰彼構わず配っている。自分にも配る。その日もそうだった。やや小柄な普通の身なりの毛糸の帽子を被ったオジサンに配った。

「あんた、俺をからかって居るのか」配った本人は、一瞬たじろいだ。

「俺にどうしろって言うつもりだ」配った本人は、困った顔をしているが沈黙。

「俺をオチョクッテ居るのか」配った本人は、とんでもないと言う顔。

「俺にこんなチラシは要らないんだよ」内容の割りには、剣呑な感じはしない。ちょっと聞こし召してはいるだろうが、危険の匂いはしない。

「伊達や酔狂でこんな毛糸の帽子を被って居るんじゃねえ、あんたらと違って、寒くてたまんねんだよ、見せてやらあ」と言ったかと思うと、毛糸の帽子を片手でサッと取った。未だ40代半ばの感じだったが、ツルッパゲ、お見事。

確かにヘアーサロンはご無用の方だった。思わず笑いそうに成ったが、静かに通り過ぎた。あの人はきっと、自宅に帰ってから奥さんにその芝居がかった話を聞かせてやるのだろう、確かあの人は市役所に勤めていて、謹厳で慇懃だった。

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